犬のしつけはどんなことをしたらいいのでしょうか?これから犬を飼う方へ、犬のしつけの必要性や基本的なしつけ、しつけを行う際のポイントや注意点をわかりやすく解説します。しっかりとしつけて愛犬と楽しい毎日を過ごしましょう。
犬のしつけは「人と犬が幸せに暮らすため」に必要なもの
犬を迎えたとき、人と犬が幸せに暮らすためには、犬のしつけが必要です。犬のしつけを行うか行わないかで、家族の生活スタイルが大きく変わることもあります。しつけをせずにただかわいがるだけでは、人間も犬も不幸になってしまうことがあります。
愛犬が周囲の人に迷惑をかけず、人と快適に暮らせるようになるために、生活上のルールを教えてあげるのが「犬のしつけ」です。
これだけはやっておきたい!基本的なしつけとポイント・注意点
今回は、犬のしつけの中でも、学習させておきたい基本的なしつけとしつけ方のポイントや注意点について解説します。
アイコンタクトが取れるようにする
犬が飼い主を見て意識を向けている状態、注目している状態を「アイコンタクト」といいます。アイコンタクトはとても大切で、すべてのしつけの基礎となるものです。
たとえば、飼い主のほうを見て意識を向けている犬と、まったく違う方向を向いている犬に「おすわり」と声をかけたとしたら、どちらの犬が指示に従いやすいと思いますか?
おそらく多くの場合、飼い主に意識を向けている犬のほうが指示に従うでしょう。
アイコンタクトができている犬は、万が一、犬同士のトラブルや突発的な出来事が起こった場合でも、名前を呼べば反応して飼い主に注目し、次の「おいで」などの指示に従いやすくトラブルを回避しやすいなどの効果があります。
また、アイコンタクトができると、犬の意識を飼い主に集中させることができるため、さまざまなしつけを効果的に学習させることができます。そのときに大切なのは、犬が「アイコンタクトをすると褒められる・ご褒美がある」=「よいことがある」と思わせることです。そうするとコミュニケーションがとりやすくなり、愛犬との絆がより深まります。
ポイント・注意点
アイコンタクトのしつけ方は、最初は愛犬の名前を呼び、目が合ったらすぐ褒めるかおやつなどのご褒美をあげて「アイコンタクト」=「よいこと」だと学習させます。目が合ったら褒める、次に数秒見つめ合う、そして徐々に長い時間、目を合わせていられるようにしましょう。おやつを使用する場合は、おやつを握った手を自身のあごの下に持ってきた状態で、愛犬の名前を呼ぶと効果的です。
人にさわられることに慣れさせる
人にさわられるのを、犬が抵抗なく受け入れられるようになるのは大事なことです。まずは飼い主とのスキンシップを通して人にさわられることに慣れさせ、ブラッシングや爪切り、耳掃除、歯磨き、シャンプーなどのケアを嫌がらずにできるようにしつけましょう。
また、散歩をするようになると、犬をなでようとして急に手を出したり、近付いてきたりする人もいます。体をさわられることに慣れていない、あるいは苦手な犬は、自分を守るために吠える、噛むなどの反応をしてトラブルになる可能性もあります。そのほかにも、犬がもし病気になって治療を受ける際に、獣医師など家族以外の人にさわられても嫌がらないように、子犬の頃から慣れさせることが大切です。
ポイント・注意点
体をさわっても嫌がらないようにするには、子犬の頃からリラックスさせるイメージでやさしく体をなでてコミュニケーションをとることを心がけましょう。まず、軽く手を握りしめて甲の部分を犬の鼻先にそっと近付けてみてください。犬が近付いてきて、手のにおいを嗅いだらあごの下から首のあたりをやさしくなでてあげるとよいでしょう。慣れてきたら、嫌がりやすい足先や口周り、お腹、耳、お尻や尻尾…といったように、なでる場所と時間を徐々に増やしていきます。慣れさせようと急ぐと逆効果になってしまうので、無理に触らないように注意しましょう。飼い主さんもリラックスした状態で、やさしく声をかけながら自然になでるのがポイントです。
トイレの場所やルールを覚えさせる(トイレトレーニング)
犬を室内飼いする場合は、トイレの場所やルールを覚えさせることも重要なしつけです。犬はトイレトレーニングをすることで、決められたトイレの場所で、ペットシーツの上に排泄することを学習します。できるだけ早く学習してもらいたい、というのが飼い主さんの本音ではないでしょうか?
トイレトレーニングは、子犬がおうちにやってきた日から始めましょう。子犬の性格などにもよりますが、なるべくトイレの失敗を減らすためにはサークルを使うのがおすすめです。愛犬が病気やケガをしたり、介護が必要になったりしたときだけでなく、悪天候の日に室内に入れる場合にも、室内でトイレができる習慣がついていると安心です。
ポイント・注意点
トイレトレーニングで大切なことは「上手にできたら褒める」「失敗しても叱らない」ことです。「トイレをすると叱られる」と犬が学習してしまうと、人がいない部屋や場所で隠れて排泄するようになる可能性もあるので、失敗したら叱らずに無言で掃除をしましょう。
子犬は寝起きと食後にトイレをすることが多いので、このタイミングがトイレトレーニングのチャンスです。床やペットシーツ以外のにおいを嗅ぎ始めたら、サークルで囲ったトイレに連れて行きましょう。ペットシーツの上で上手に排泄ができたらすぐ褒めて、その後、サークルから出してあげることを繰り返してトイレを学習させていきます。
ペットシーツの上で上手に排泄できるようになったら、サークルをはずしてもできるようにステップアップしていきましょう。汚れたペットシーツはこまめに交換してトイレを清潔にすることがポイントです。
食事は飼い主の許可が必要なことを覚えさせる
食事のしつけは、犬の健康維持のために大切です。人間の食事をほしがるからと与えていると、肥満や病気になるだけでなく、食事への執着が強くなり、自由に食べる習慣がついてしまいます。食卓や台所にある食べ物や、散歩中や外出中に落ちているものを勝手に食べて、害になる可能性もあります。フードやおやつなどを与えるときは、食事は飼い主の許可が必要なことを覚えさせましょう。
犬に食事を与える際に、フードの入った食器を前にして「まて」「よし」と許可を与えて食べさせることで、飼い主の指示に従うこと、指示なく落ちているものを食べないこと、自分の食事は食器の中にあるものだということを教えることができます。
ポイント・注意点
フードの入った食器や手に持ったおやつをあげるときは、犬の意識を飼い主に向けさせるチャンスです。指示がないと食べられないと学習させることで、犬をコントロールできるようになります。食事の許可を与えたら、必ずあげましょう。長時間待たせると犬のストレスになってしまうので、あまり待たせずに食べさせるようにしてください。
犬主導の食事にならないよう、人間の食べ物をおねだりしてきても与えないようにしましょう。また、毎日同じ時間にフードを与えていると、食事の時間になると吠えたり催促したりする可能性があります。食事は毎日決まった時間でなく、飼い主さん主導のタイミングで与えることもポイントです。
噛んでよいもの・悪いものを覚えさせる
子犬のしつけの悩みで多いのが甘噛みです。遊んでいるとじゃれて手を噛んできてかわいいと思ったら大間違い!子犬の甘噛みをそのままにすると、成犬になってからさまざまな問題行動につながることがあるので、強く噛んだら「痛い!」と声を出して子犬のうちにやめさせるようにしましょう。
歯の生え変わりの時期に部屋の中のものをなんでも噛むなど、いたずらすることも多くありますが、誤飲や電気のコードを噛んで感電することもあります。甘噛みもいたずらも飼い主さんがはっきりと意志を示し、噛んでよいものと悪いものを覚えさせることが大切です。
ポイント・注意点
手を甘噛みされたときはしばらく無視をしたり、犬のおもちゃを使って一緒に違う遊びをしたりするのも効果的です。いたずらをする犬は、噛んでよいおもちゃを与える、一緒に遊んでストレスを発散させる、噛み癖防止グッズを使う、留守番の際にケージやサークルで待たせるようにし、噛んでほしくないものや危険なものは犬の届くところに置かないようにするなど、興味を違うものに向けるように工夫しましょう。
いろいろな人・生き物・物・音に慣れさせる(社会化トレーニング)
犬は人間と暮らす中で、多くの人や犬に出会い、たくさんの経験をしていきます。飼い主さんと共にさまざまな場面で落ち着いていられるように、いろいろな人や生き物、物や音に慣れさせることを社会化トレーニングといいます。
特に子犬の社会化は重要で、生後約3〜14週目の期間に経験したことが、犬の性格を左右させるともいわれています。社会化トレーニングでは、帽子をかぶった人や作業服の人、傘をさした人に出会う、掃除機や洗濯機などの生活音、車やバス、子供の声など街の音を聞かせるなど、さまざまなことを経験させてあげましょう。
ポイント・注意点
子犬にワクチン接種をして獣医師から散歩開始のOKをもらったら、積極的に外に出てほかの犬に会うなどさまざまな経験をさせてあげてください。犬のしつけの第一歩として、ドッグトレーナーによる「パピークラス」「パピーパーティー」と呼ばれる社会化トレー二ングを行なっているしつけ教室や動物病院などもあります。
大切なのは「できたら褒めてあげる」こと
犬のしつけをしているときに、気が付くとつい叱っていたり、感情的になっていたりしませんか? 人間も何かを学ぶときに、強く叱られてばかりでは萎縮してしまいます。これは犬のしつけでも同じことです。まずは基本的なしつけであるアイコンタクトやおすわり、まて、トイレができたら褒めてあげるのを徹底しましょう。
犬のしつけは、「◯◯をしたら褒められた」=「よいこと、楽しいことがあった」と学習させること。指示したことができたときは、その瞬間にタイミングよく褒めることが大切です。しつけがうまくいかない場合は、原因が飼い主さんにないか振り返ってみましょう。たとえば以下のようなことはありませんか?
しつけは犬にとって苦しいものではなく、「楽しい!」「うれしい!」「もっとやりたい!」「飼い主さんの指示に従いたい!」と思えるようにアプローチしてあげることが大切です。